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How InterBase came to be

InterBaseはどのようにして生まれたか-

by Ann Harrison (翻訳 林 務)

 

InterBaseの草創期について、その生みの親以上に描写することができる者がいるだろうか?幸運なことに、Jim Starkey Ann Harrison はこの輝かしい日々の記憶を共有しようとしていた。IBMIT世界のルールであり、Microsoftはちっぽけな会社に過ぎなかった。「真のプログラマはPascalを使わない[i]」といわれていた。

 

Ann HarrisonによるInterBaseの始まりの回想

 

InterBaseはシャワーとともにはじまった。米国マサチューセッツ州グロトンのReedyMeadow通り297番地で、青いタイル貼りのシャワールームだったとはっきり覚えている。そこで、シャワールームの窓越しに森を見ていてた時、Jim StarkeyInterBaseにつながる「ユリイカ!」[ii]を得たのだ。

 

70年代中期にDECに引き抜かれたJimにとって、それはリレーショナル・データベースのコードを書くチャンスだった。しかし、商用システムにとってはネットワーク・データベースのみがサポートされると広く信じられていた。この誤解を振り払うのに4年間を費やしている間に、JimDatartrieveをデザインしコードを書いた。それは、フラット・ファイル・データベース[iii]DMBS-32上で動作するリレーショナル・クエリー言語だった。Datatrieveのユーザーはよりフレキシブルで、同時並行動作の制御に優れ、原子性[iv]のあるトランザクションを兼ね備えたシステムを求めていた。

 

DECが最終的にリレーショナル・テクノロジーを取り入れる決定をした時に、JimはまだDatatrieveに取組んでいたので、別のグループが後にRdbになるシステムをデザインし始めた。彼らは、「リレーショナル」と「データベース」の意味について論じ合った。彼らは、一貫性の度合い、ロッキングの意味、シャドーイングのテクニックに関してすばらしい議論を持ち、文献を調査した。しかし、彼らはコードを一つも書き始めなかった。

 

シャワーとシャドーイング

 

Jimはイライラしてきて、シャドーイングについてコードを書き始めた。それは、彼にとって更新をブロックすることなく反復的読み取りを提供する方法であるように思えた。そして、ある朝シャワーの中で、彼はシャドウがまた、更新の衝突を防ぎ失敗したトランザクションを取り消すことをもまた、可能にすることを理解した。マルチ・ジェネレーション・データベースは、シャワーの中にそれ自身の姿を現したのだ。

 

興味を引き付けられて、Jimjrdと呼ばれたデータベースの仕事を真剣に開始した。DECの経営陣は二つのリレーショナル・データベース・プロジェクトがあることを発見した。そのうちの一つがjrdであった。データベース戦争が勃発した。

 

それは暗い年月であった。血なまぐさい政治と誹謗中傷メールの嵐だった。JimDon DePalma、そして私はもっと良い方法をとる事を決心した。私達は、地方のワークステーション販売会社のアポロ社が自社ブランドのデータベースを欲しがっていることを知った。アポロ社の経営陣はjrdのモデルを評価してくれたので、Jim(自宅の)2階のスペアルームへ移り、コードを書き始めた。最初の投資は快適なイスとデスクとしても使える持ち上げ式ドアのキャビネット2つ、締めて243.5ドルであった。 

 

私たちが交渉を開始してから8ヵ月後に、アポロ社との契約が交わされ、資金が入ってきた。Donと私は、とてもとても暑い2階のスペアルームでJimに合流した。Jimはコードを書き、Donはマニュアルを書いた、私はその他の全てのことをやっていた。猫がコンピューターの上で寝ていて、猫の抜け毛とフケが全てのマシンに降りかかっていた。アポロ社の清掃要員が毎週やってきては掃除機をかけていった。

 

Dave Rootがアポロ社を辞して4番目の創立者となった。どんな会社でも一人は正気の大人が居ないといけない。私たち4人はスペアルームにあふれてしまったので、この会社はバルコニーへ溢れ出した。

 

私達は顧客と顧客になる可能性のある人々を持つようになったので、ミーティングとメールでのやり取りを開始した。応接室はコピー室兼郵便室となり、リビングルームは会議室となった。私達はキッチンで食事を作り、ダイニングルームで食べた。珈琲ポットはバスルームの私のシンクの脇に置かれた[v]。私達はもはや家で働いているのではなく、仕事のうちに生活していた。

 

その年、ドライブウエイは木々に沿って曲がりくねり、凍っていて、サーブにとってはソリで走っているようなものだった。1月には、アポロ社以外のはじめての顧客がカリフォルニア州サンタバーバラからやってきて、前庭に滑り込んで、なんとかまっすぐに立っていた。とにかく、彼は契約を交わしてくれた。

 

グロトン・データベース・システムは家を追い出されたので、クリーニング屋の上のオフィスへ移転した。私はようやくバスルームから出ることができた。

 

「グロトン・データベース・システム」というのは、霊感を受けた名前だ、それは商標検索に引っ掛からない名前を探すことに私たちが失敗したことに端を発していた。私達はナイーブな新興企業家だったので、いつも名前のことを考えていた。私達は弁護士に「これでいい?」とたずねたものだが、後になって知ったところでは、そういう場合は「この名前を使って問題が起きたら弁護してくれる?」と尋ねるのが正解らしい。それほどに洗練された知識の下に、私達はシステムの名前をInterBaseへと変更した。それは、電話で「Rrrotten Database Systems」と応えた人がいたのでますますそうしようということになった。

 

コンセプト:簡単なこと

私達は何をしようとしていたのか?何かの邪魔になったりしないリレーショナルデータベースを作ること。一つには、インストールが簡単であること、管理が不要か殆ど必要ないこと、出来ればアプリケーションの内部で動作すること。

 

私達は皆、ネットワーク・データベースの経験を有していた。IDMSSeedDMBS-32。ネットワーク・データベースを使うためには、チューニングを心から愛さなくてはならないし、微調整をし、勉強をし、データベースを文字通り愛玩しなくてはならない。InterBaseは、真の仕事に取り掛かりたいと思っている私たちを休ませてくれるのだ。

 

履歴型アーキテクチャ-Jimのシャドーイングから得たユリイカ-は、他のデータベースが足をすくわれている問題を解消した。他の誰かが同じデータを更新している間に、大量の一貫性のある報告書を作成しようとするための読み取りが可能である。トランザクションのロールバックは単純だ、クラッシュからの復旧ですら自動的にできる。

 

クラッシュからの復旧は必須の要素だ。なぜなら、私達は会計・販売・コード管理・その他全てのことを、つまり会社をInterBaseによって運営しているからだ。電気的な故障は日常的に起こりうる、電気の使いすぎにしろ、夏の雷雨にしろ、電源コードを足に引っ掛けてマシンの電源が抜けてしまうというアクシデントだって起こりうる。データベースの復旧は私たちにとっても、どの顧客にとっても重要なことだった。

 

InterBaseは大変良い製品で、顧客の殆ども大変喜んでくれていた。私たちの会社は成長して、社員は7人となり、今ではドーナツ屋になっているかつてのクリーニング屋の上の2つの続き部屋へと拡張された。私たちのところにやってくる保険屋さんはドーナツ屋を毛嫌いしていたが、クリーニング屋の臭いに比べればまだましだった。

 

独自の魅力

ある場所には、それ自体に独自の魅力というものがある。あちこちで、床が気になるほど沈んでしまっていたり、誰かがそこに乗ると軋んだりすることがある。四角い角が一つも無いとか。私達は大変多くのコンピューターを所有していたので、そしてもちろん最近のものよりも古いコンピューターほどより大きくて発熱するものだから、私達は一年中エアコンをつけっぱなしにしていた。春と秋にはエアコンが凍り付いてしまうので、私達はヘアドライヤーをいくつか持ち出して氷を溶かして、なんとかまた涼を取れるような感じだった。

 

冬に入って数ヶ月経った後に、ガス会社がおよそ350ドルの請求書を送りつけてきた。私達はガスよりもよほどコンピューターによって暖を取っていたので、それまで私たちへの請求額は1ドルから2ドルのあいだだった。マス・ガス社は、私たちがガスを盗んでいると確信していた。彼らは、メーターを2回も交換したのに、まだ信じられないほど低い値をメーターから読み取るばかりだった。結局、検針員が私たちのオフィスへやってきて、コンピューターが大変な熱を発しているのを見て、納得して帰っていった。

 

顧客がたいていは大会社だったので、私たちのような大変小さな会社を扱うのになれていなかったため、私達は購買部門と未払金に関してやりあわねばならなかった。いくつかの会社では、「サポート更新」とラベルした品物[vi]の請求書を箱で送り付けなくては支払してもらえなかった。私には、これらの会社がどうやって電話料金の請求書のルールを曲げているのか想像もつかない。

 

私たちの顧客の一つに米国陸軍フード・サービスの目立たない係があった。彼らのプログラマーがトレーニングコースを希望していた。私達は地方のホテルの会議室を借上げ、見栄えの良いような格好をしていた。二人の男性が到着して、受講料をトラベラーズチェックで支払った、しかも外国人旅行者のトラベラーズチェックでだ。彼らは、自身の役割について何も語らなかったし、軍隊の物資供給を満たすための彼らの役割についてさえ話そうとしなかった。ほとんどなにも。

 

製品を見栄え良く見せかけることは、私たちがもっとも苦手とするところだった。Donは最終的にJimを説得して、私たちのユーティリティソフトウエアを「成功のためにドレスアップする」ことにした。ダッドリー(DDL用ユーティリティ)、バープ(バックアップ・レストア・ユーティリティ)、アリス(その他用途のユーティリティ)という名前がそれぞれに付けられた。訪問客が予想される時、私達は努力を払ったが、それは特に深くというわけではなかった。銀行員が、私が何とかしようとしていた備品向けローンの件で訪問してきた。銀行員は目端が利いたので、わが社にある全てのコンピューターを指摘して言った、一つとして2年以上経っているものはなかったが、「全てが時代遅れである」と。もちろん、他にも銀行はいくらでもあった。[vii]

 

サポートの重要性

サポートは私たちの仕事の上でもっとも大事な部分であった。企業がデータベースを買う時に、それはソフトウエアのコスト以上の投資をすることであるといえる。口コミは私たちの最大の広告であって、私達は顧客の成功のために働いていた。殆どの疑問は電話で解決することが出来た。

 

カリフォルニアの航空宇宙産業の大きな企業が問題を抱えた時、私達はその問題をリモートで診断することが出来なかった。レコードがデータベースから消えてしまう、ランダムに、そしてそれがしょっちゅう起こるのだ。顧客のエンジニアは彼のプログラムのせいではないと確信していた。彼は、そのことに人生をかけても良いと言った。Jimはソース・キットとともに顧客の下へ飛んで、デバッグ用システムを構築し、DELETE文から戻ってくる問題を追跡した。この企業は重要な顧客となったが、にもかかわらず購買部門の意見では我々はちっぽけで当てにならないのだそうだ。

 

現在でもある企業が、InterBaseの立ち上げ時のようにする事が出来るだろうか?恐らく出来ないだろう。リレーショナル・データベースを「ビルド」する会社などとんでもない。要求されることはどんどん増えてきているにも関わらず、価格は逆に下落していった。私達は1986年には、少々のコマンドラインツールをつけてデータベースを数千ドルで販売することが出来た。現在では、顧客はデザインツール、分析ツール、RADツール、管理ツール-それら全てが優れたGUIを兼ね備えているような-のパッケージを期待している。しかも、それらを100ドル以下で手に入れようと考えているのだ。

 

InterBaseはそれ自身の収益で5年間成長を続けて、投資家と出会う前の私たちにいくつかのビジネス上の経験をもたらしてくれた。市場が十分に大きい場合ですら、事業を成立させるために十分な顧客の注目を得ることは、大きな資金を必要とする。投資家-又は大きな信託基金-の援助無しに事業を開始することは、今日では絶対に不可能だ。その場合にも、金融資産を持つ企業は自力の[viii]企業よりましである。

 

Sybaseはグロトン・データベース・システムの時代に、幾百万のベンチャー・キャピタルのうち十幾つかに見出された。Sybaseはより多くの圧力を受け、より多くのソフトウェアを売った。しかし、私達はたくさんのファンを得ていた。ラッキーだったなと、私は思っている。

 

 

 



[i] 原題は「Real Programmers Don't Use PASCAL」です。http://24.161.189.7/notes/pascal/e.html に原文、http://24.161.189.7/notes/pascal/j.htmlに日本語訳があります。

[ii] なんでシャワーなのかというと、アルキメデスが浮力の原理を発見した時に「ユリイカ!」(我発見せり)と叫んで風呂から裸で飛び出していったと言う有名な話に引っ掛けたのでしょう。

[iii] フラットファイル・データベース:1テーブル1ファイル構成のDB。今でも利用されています。

[iv]全てが完全に実行されるか、処理が中断された場合、元の状態に戻るという意味です。

[v] 後でも同様の記述がありますが、どうやらAnn氏はバスルームで仕事をしていたようです。でも、一体どうやって?(^^;

[vi] 原文は materials labelled "support renewal."何かのモノにラベルを貼って送ったのでしょう。

[vii] この銀行は融資をしてくれなかったようですが、他の銀行から借りられたんでしょうかね?

[viii] 原文ではbootstrap companiesとあり、自己・縁故による資金調達を意味します。


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