Interview with Ivan Prenosil
2003 / 7 / 25
2004 / 9 / 1 翻訳版 DelphiマガジンVol.36 掲載
Written by Marina Novikova
on InterBase World (URL http://www.interbase-world.com/)
翻訳:林 務(株式会社アペックス)

 本インタビューは、InterBase World のWebサイトでMarina Novikova氏によって公開されたものを、Marina氏とIvan氏の許可によって翻訳したものです。
 Ivan Prenosil氏は、2000年からInterBase/Firebirdに関するWebサイトを立ち上げられて、コミュニティの活動を牽引されています。このサイトは、木村明治氏によって日本語化されて公開されていますので、ご存じ方もいらっしゃるかと思います(http://www.geocities.jp/kimura804/rdb/)。
 Marina Novikova氏はロシアの企業で英文翻訳とテクニカル・ライターをするかたわら、InterBase Worldの管理者をなさっています。Marina氏はInterBase Worldで、毎週のようにインタビューやレビューを更新されているのですが、このインタビューは、技術的なことやビジネスに関することだけでなく、各ゲ ストの人となりがよく現れていて、私はいつも楽しみにしています。




「Ivanは、長年にわたってInterBaseの開発に携わってきた人物で、彼の意見はいつもよく考えられているものだ」(www.ibphoenix.com)。
彼のサイト http://www.volny.cz/iprenosil/interbase/ には、素人であろうと玄人であろうと役に立つ技術情報が満載です。しかし、彼がオルガンを弾いたり、Delphiを訪れることを夢見ているとは誰が知っていたでしょうか?




Marina Novikova: ご自身のことについてお聞きします。趣味は何でしょうか、音楽はどのようなものをお聞きになりますか、また、好きな本(作家)や映画はどのようなものですか?

Ivan Prenosil: いまのところ、私の趣味は写真を撮ることです(私の写真を送れないのはどうしてかというと、いつも私はカメラの背後にいるからなのです)。また、音楽はとても好きです。よく聞いているのはクラシック(Rackmaninov、Saint-Saens、Madelssohn、Copland、Chopin、...)ですが、正反対にGenesis、Santana、Pink Floydやジャズ(Petrucciani、Corea)もよく聞きます、昨年はここプラハで日本の「太鼓ショー」があったんですよ。
それから、私はピアノとオルガンを弾いていました(何度かバロック時代の古楽器に触れる興味深い機会もありました)、ここ数年はやっていないのですが、というのも私が仕事から帰ってくると隣家の人々がもう寝ている時間になっているからなのです。その自分の唯一の名残は、私がPCのキーボード上で全ての指を使っているということだけかもしれません。
映画は、あまり見に行きません、なぜかというと私の好きな映画はちょっぴり時代遅れのモノだからなのです。2001年宇宙の旅、Chicken Run、 La vita e bella、 Laurel and Hardy、その他歴史物で...いい映画がいくつかあります、like Kundun、 Zorba the Greek、Himalaya-Caravanはサウンドトラックも素晴らしかった。
本については、読むのがとても遅いので、また時間も全然無いので、実際に読んできたものと、私が読みたいものには大きなギャップがあるのです。例えば、SF(Clarke)を読みましたし、最近はよりドキュメンタリーな本(歴史や哲学に関するものなど)をよく読んでいます。しかし、一日中コンピュータ・スクリーンやマニュアルの上で過ごすようになってからは、別の活動をしたくなるようになっています。
その他の趣味では、天文学ですね。不幸なことに、ここ数年間の天候は私にとっては逆風でした。長い間メジャーな彗星雨をちっとも見ることが出来なくて、1999年の皆既日食の時も曇っていたことは言わずも知れたことです。(私はスポーツマンではないのですが、スキーは好きです(ダウンヒルもクロカンもね))

Marina Novikova: ビールは飲まれますか?もしそうなら、どんなものがお好きですか?

Ivan Prenosil: いや、飲みません。

Marina Novikova: いままでにもらった中で、もっともおかしな(あるいは奇妙な)プレゼントは何でしょうか?

Ivan Prenosil: へんてこなプレゼントというのは全く無かったですね...
子供が生まれる前に、私の妻が息子を欲しがっていて、自然と私たちはそうなるものと思っていたのですが、実際には娘が生まれて(マーフィーの法則ですね)、つまりアダムが生まれた時 、いい意味で驚かされることになりました。

Marina Novikova: 人生の中でもっともエキサイティングな日を覚えていらっしゃいますか、あるいは、人生の中で最も素晴らしい瞬間など。

Ivan Prenosil: うーん、何も思いつかないなぁ。たぶん、プラハの古い街並みに住んでいるので、築後400年くらい経っているんです、ミステリアスなロフトがあって、地下墓地のような貯蔵庫があって、日時計もあり、3階にある私の部屋の窓から直接手を伸ばして梨をもぎ取ることもできるんですが、考古学者が最近になって発見したところによると、その梨の木というのは実はかつての墓場の上に生えているとか(学者さんたちは沢山の人骨を発掘していました)、プラハ城まで歩いて10分くらいなんですが、プラハ城にはゴシック様式のカテドラルやロマネスク様式のバシリカ聖堂があって、また15分くらい歩くと天文台(いくつかの望遠鏡とコロナグラフがある)があるんです。

Marina Novikova: どんなことがお嫌いですか?

Ivan Prenosil: 書類を埋めることと、列に並ぶこと。

Marina Novikova: 周囲の人々のどんな行動があなたをイライラさせますか?

Ivan Prenosil: 傲慢さと不寛容ですね。

Marina Novikova: いま自由になる時間あるとしたら、どうお使いになりますか?

Ivan Prenosil: 自由にならない時間に終わらせないとならないことを、そのまたおまけに終わらせるために使わないとならないでしょうね。

Marina Novikova: 何か大きな夢というのはおありですか?

Ivan Prenosil: Martian と握手をしたいですね。

Marina Novikova: いままでにどこか他国へ行かれたことはありますか?どこが一番気に入りましたか?

Ivan Prenosil: そのリストはとても長くなってしまいますね、もっともヨーロッパの近隣に限られていますが。オーストリア、英国、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ノルウェイ、ポーランド、スペイン、スイス、ユーゴスラヴィア/クロアチア、スロヴェキア、ハンガリー、ブルガリア。
どの国も、それぞれに興味深いところがありますね。私は好きで、しょっちゅうギリシャへ行っています(クレテのKnossosパレス、テラのvolcano島、Corinth運河、アテネ、オリンピア、Samos)。でも、まだDelphi神殿に行ったことが無いんですよ。(^^;

Marina Novikova: 突然宝くじに当たったら、何を買いますか?

Ivan Prenosil: さっきのリストに載っていないいくつかの国々を訪れたいですね(アイスランド、チリ、ニュージーランド、東南アジア)

Marina Novikova: 学歴をお聞きしてもよろしいですか、また、ハイテク領域で働こうとお決めになったのはどうしてですか?

Ivan Prenosil: プラハのチェコ工科大学で、電気工学を学んで、国家試験に受かって、「Ing」の資格を授与されました(なんと訳したら良いかちょっとわかりません)。プログラミングと電気工学はいつも私の趣味でもありました(思うに13歳の頃から)、ですので道を決めることはたやすいことでした。

Marina Novikova: いつからWebサイトを始められたのでしょうか?

Ivan Prenosil: 1997年からInterBaseのメーリングリストのいくつかに参加するようになったので、私のメーラーのSentフォルダはどんどん大きくなりました。私はそれらの情報がより有益な貢献に役立つのではないかと考えたので、比較的不安定なニュースグループではない別のどこかで公開しようと思いました。そうしたら、Claudio Valderrama がちょっとだけ背中を押してくれたというわけです、2000年の中頃でしたね。

Marina Novikova: あなたのWebサイトは、多くの有益なアーティクルを持っていますし、人々はあなたをInterBaseのただ者ではないスペシャリストだと知っています。InterBaseに関する書籍を書こうと思ったことはありませんか。

Ivan Prenosil: もちろんです、十分アイデアと素材を持っていると思っています。しかし、それを書籍に「構築」するためには、何ヶ月もの労働をしなくてはなりませんし、最初に出版社を見つけて、あるいはスポンサーか、宝くじを当てないと...

Marina Novikova: どうして、InterBaseを使うようになったのでしょうか?また、他のデータベース・サーバもお使いになっていますか。

Ivan Prenosil: 1990年に、鉄のカーテンが落とされたすぐ後のことです、休暇にノルウェイへ行ったのですが、そこでSQLに関する書籍を買いました、それは素晴らしいアイデアであることがわかりました、私の一ヶ月の収入の半分に近いコストがかかると言うことを除いてね。
5年後になって、データベースシステムを選定しなくてはならなくなって、InterBaseはベスト・チョイスだったのです(少なくとも私にはね。会社の中にはAccessにこだわっている人間が一人いましたよ)。我々はデータベースにスケーラビリティを求めていました(この点でSybaseは除外されました)、WindowsとUnix系のシステムの両方で稼働することも条件でした(この点でMS-SQLとInfomixが除外されました)、そして導入コストが低いことが必要でした(この点でOracleが除外されました)、信頼性も当然必要です(この点でおもちゃ系のAccessやdBaseが除外されました)、イベントが使えて、blobをうまく使うことが出来、自国語をサポートし、オンライン・バックアップが可能で、並行トランザクションが出来る、...InterBaseの他になにか思い浮かべることが可能ですか?InterBaseの開発者(特にJim Starkey)とメーリングリスト上で直接話すことが出来るというユニークな可能性も説得力を持ちました。そして、こうした合理的な理由以外にも、私は「エレガントな発明」が好きなので、つまり、航空機やカテドラル、マルチ・ジェネレーション・アーキテクチャ、宇宙(の構造)、物質、自然等...
私は他のリレーショナル・データベースは使いません(過去にはOracleやInfomix、dBaseも触りましたけどね)

Marina Novikova: チェコ共和国でのInterBase/Firebirdの人気について、何かお話し頂けませんか。こうしたものを証明するような投票結果などありませんか。

Ivan Prenosil: チェコでは多くの人々がInterBase/Firebirdを使っていると確信できます、しかし確たる証拠を持っているかというと、持ってないですね。

Marina Novikova: ポスト−リレーショナル・データベースやオブジェクト・RDBMSに対して、どのようにお考えですか、例えばCacheについて?これらは、すぐにも市場のRDBMSを置き換えてしまうでしょうか?

Ivan Prenosil: 最初に言っておくと、私のRDBMSに関する主な関心はフル・テキスト・データベースにあります。(まだ)私はオブジェクト指向DBMSの必要性を感じたことはありません。(しかしすぐに変わるかも知れません、いま新しい仕事を探しているのでね)もちろん、データベース・テクノロジの新しいトレンドに関しては学ぼうとしていますが、そういったものに対する選択権を社内で持っていないのです。ポスト−リレーショナルDBMSについての一般的な書物(少なくとも私が読んだもの)は、一般的なことしか書いてありません、特定の製品に関するものは自画自賛に満ちています。テストも無しに、そのように実装されたフィーチャーが実際に利用価値があるかどうかを識別することは困難ですし、どれもがそれぞれの新製品の「委任統治」になってしまっていますし(この頃ではそういったもの無しには市場性を見いだせませんからね)、いずれにせよそういったフィーチャーが必要かどうかはお構いなしなんです(オブジェクト指向、Java、XML、ハイパーなんとか...)。Cacheもインストールしてみましたが、いろいろと試したり学んだりする時間がまだ無いのが現状です。
そういったものがすぐにもRDBMSを市場で置き換えるでしょうか?Noだと思います。
それらがすぐにもRDBMSの深刻な競合製品となるでしょうか?Noでしょう。それらの製品の性能がアドバンテージを本当に得るためには、新しいスタンダードが必要となるでしょう、新しい接続ドライバ/ライブラリ/コンポーネント、その他。しかし、何事もいかに乱暴に/攻撃的にどうするのかということに、その市場性というのは関わっているのでしょう。あるいは恐らく、そういったものがオープンソースとしての価値を現す時にかかっているのだと思います。
しかし私はよい研究者ではないので、例えば、60年代から70年代の高級言語での開発を見ると、Pascal、Simula、Ada...、クラス/オブジェクトのような素晴らしいフィーチャーを持っていて、構造化された例外ハンドリングがあり、強力な型チェックがありました。いったい誰が何年にもわたって支配的な言語が C になることを期待したでしょうか(私は絶対ちがいます)!?

Marina Novikova: あなたのWebサイトのほとんど全てのアーティクルはサーバサイドに関するものです。そこから察するにあなたの開発経験はほとんどがデータベース上のもので、クライアント・ソフトウェアを書くことは少ないのでしょうか。その場合、もしあなたがクライアント・アプリケーションを書くとすると、どういったオペレーティングシステム上で、どういった開発環境を利用されていますか、また、それはどのような理由からでしょうか?

Ivan Prenosil: 私はデータベースとアプリケーションの両方を開発しています(とはいえ最近はほとんどデータベース上の開発に時間を費やしています)。サーバサイドに関する記事は、そちらの方がより多くの人々にとって有益だと強く考えているからです。もしクライアント・サイドに関して何かを書くとしたら、ほとんどの場合、特定のアクセス・メソッドやライブラリに制限される事になるでしょう。
現状では、私はWindows上の開発を行っています、単にそれを顧客が使っているためですが(しかしこれまでにOpenVMS、Sinix、Linuxでも開発を行ってきました...)。
最初に学んだコンピュータ言語はAlgolでした(それはまだ私がコンピューターというものを目にする前のことです)。二番目の言語は(TIとHPのプログラム電卓を除いてね)Pascalでした(それをICLコンピュータ上で遊びました。コンパイラを書いたのはWirth自身で、いくつかのバグを修正するパッチを書いたことを覚えています)。とはいえ最近では私はC言語を学び、使用しています(そのほかにもいくつかあったけど、もう忘れてしまいました、いまでは誰も使っていないようなものです、Fortran、Prolog、Simula67なんかですね)、一度でも高級言語を使用したことがあるならおわかりでしょうが、C言語のような低級言語を使いたいとは思わないでしょう(私はこれを「高級アセンブラ」と呼んでいます)、特に理由がない限りはね。ということで、質問の答えになりますが、私の好んでいる開発言語はPascal/Delphiなんです。
その上、ObjectPascalが欠点(例えば移植性の無さ)を持っているとしても、オルタナティブはありませんね、広く使われている(コンパイラ)言語を挙げると、C++位になりますが、私が思うにC++はCから悪いところを沢山引き継ぎすぎているように思います。(しかしC++Builderを使うことはあったかも知れません、BorlandがそいつをDelphiより前に作っていたとしたらですが)そういった意味では、ふさわしい開発言語を選択するという問題を解決するために、自分たちで言語を開発して使っている会社もありますね。

Marina Novikova: InterBaseとFirebirdが離れていく傾向にあることをどうお考えですか?両者は全く違ったデータベース・サーバになっていくと思われます。これはプラスですかマイナスですか?

Ivan Prenosil: それは傾向ではないですね、両者はすでに全く違ったデータベースになっています。ここ何年間か、私はいろんなニュースグループに流れる不満を読んできました「上司(あるいは顧客)が、最愛のInterBaseの代わりにOracle(とかMSSQL)を使えと言うんです!」とね。いまでは、それどころかこんなメッセージが流れています、たとえば「上司がFirebirdの代わりにInterBaseを使えというんです!」「上司がInterBaseの代わりにFirebirdを使えと言うんです!」などですね。
こうした分離の不利益があるとすれば、遅かれ早かれほとんどのデベロッパはどちらかを選ぶことになって、多くのアプリケーションがFirebird-OnlyやInterBase-Only(あるいはYafill-Only)になってしまうことでしょう。逆に言えば、選択することはいいことだとも言えます。両者の分離は、同じルーツを持つオープンソース製品とクローズドソース製品の開発競争という滅多にない機会になるからです。また、FBとIBが再統合される可能性は全くないでしょうから、こうしたことに時間を費やすことは無駄だと思います。
ということで、「プラス」に1票としましょう。

Marina Novikova: コンピュータゲームをやりますか?もしイエスなら、お好きなものは何でしょうか?

Ivan Prenosil: あなたは、厳粛な開発者という私のイメージをぶちこわすおつもりですね?(^^;イエス、コンピュータゲームをやりますよ。あまりしょっちゅうではないですが、年に2本くらいかな、大体アドベンチャーゲームなんですが、例えば、ルーカスアーツのGrim Fandango(英語教育に最適ですね、音楽も素晴らしい)です。

Marina Novikova: 開発者として見た場合、InterBaseに欠けているものはなんでしょうか?

Ivan Prenosil: それはとても長いリストになっていまいますね、全て列挙しましょうか?(^^;−いくつかの素晴らしい機能がAPIからしか使えないこと、DSQLやSP/TriggerやUDFで使えません、BLOBフィルタやストリームBLOBなどです。−ケース・インセンシティブな検索、隠しフィールドは余りいい考えとは思えません、Dave氏のコレーションKitはいい考えです、不幸なことにFBサーバのいくつかの制限のためにケース・インセンシティブなLIKEとSTARTING演算子の問題は解決できていません。−オプティマイザに対する制御をより強化すること、現在のオプティマイザは情報が少なすぎて、最適化したPLANを作成することが出来ないのです(例えば最初のレコードをより短い時間で取得したいとか、全結果セットをより短い時間で取得したいとかあるでしょう?速度よりも考えなくてはならない重要なことがあることも考えられます。例えば、indexによって行間を移動するよりもソートを早く行いたいとか、巨大なソートファイルを作成する余裕があって、データベースより大きくなってしまうとかね?)−セキュリティの強化(誰でも新しいデータベースを作成できて、新しいオブジェクトをデータベースに作成できて、オーナーでなくてもオブジェクトをドロップできて、全てのジェネレータの値を変更できて、キャッシュサイズを変更できる...)

Marina Novikova: InterBase Worldのコミュニティに一言お願いします。

Ivan Prenosil: いつでも人々が素晴らしいアイデアとともにあり、それを実装するだけの十分なエネルギーも、それから革命的な変化をさえ実行するだけの勇気も与えられますように。