Interview with Craig Stuntz
2003 / 1 / 20
2004 / 7 / 1 翻訳版 DelphiマガジンVol.35 掲載
Written by Marina Novikova
on InterBase World (URL http://www.interbase-world.com/)
翻訳:林 務(株式会社アペックス)

 本インタビューは、InterBase World のWebサイトでMarina Novikova氏によって公開されたものを、Marina氏とCraig氏の許可によって翻訳したものです。
 Craig Stuntz氏は、Borland社の運営するニュースグループ等でBorland製品をサポートするTeamBというグループに所属して、InterBase担当として活動されています。また、InterBase PLANalyzer や InterBase Performance Monitor などのフリーツールを公開して、デベロッパーに奮起を促しています。
 Marina Novikova氏はロシアの企業で英文翻訳とテクニカル・ライターをするかたわら、InterBase Worldの管理者をなさっています。Marina氏はInterBase Worldで、毎週のようにインタビューやレビューを更新されているのですが、このインタビューは、技術的なことやビジネスに関することだけでなく、各ゲ ストの人となりがよく現れていて、私はいつも楽しみにしています。




Marina Novikova: ご自身のことについてお聞かせ下さい。
趣味は何でしょうか?また、どんな音楽をお聴きになりますか?それから、お気に入りの本(作者)はどんなものですか?

Craig Stuntz: 私はたくさんの趣味を持っていましたが、昨年娘が生まれてからは、仕事以外のことでは彼女と遊ぶことの他には何もしなくなってしまいました。
もっとも、私と妻は二人で築115年の古い家屋のリストアをしている最中なので、2,3時間でも手が空いた時には家具を組み立てたりもしています。
音楽の趣味について言うと、なんでもありなんだけど、商業ラジオでかからないようなものならほとんど何でもOKですね、でも、ここはロシアのサイトなのでお気に入りのロシアのバンド [1] を宣伝させてね。
ここ数週間の間に読んだ本で一番いいなと思ったものは、Daniel Ellsberq の『Secret』 [2] なんだけど、お気に入りの作家というとJannette Winterson [3] かな、彼女の体操のようなな言葉の使い方がお気に入りなんです、それから、Neal Stephenson [4] ですね、彼の創作は素晴らしいですね。

Marina Novikova: ビールはお飲みになりますか?もし飲まれるのであれば、どんな銘柄がお好きですか?

Craig Stuntz: もちろん飲みますよ。新鮮なものがいいですね。UKでは、どこでもうまいビールが手に入りますが、合衆国では、ちょっと難しいですね、もっとも、私の街ではいいビール・パブ(全部で4ヶ所以上ありますね)があるので安心です。自分が好きなのは、Bell [5] ですね。

Marina Novikova: 今までもらったもので、一番おかしな(へんてこな)プレゼントは何でしたか?

Craig Stuntz: ミツバチの群 [6] ですね、父親からもらったんですが。

Marina Novikova: これまでに一番エキサイトした日、あるいは一番素晴らしかったなと思った瞬間というのは覚えておられますか?

Craig Stuntz: ちょっとはまりすぎだけど、本当のことなので。やっぱり娘が生まれた日ですよね。ウチの娘は自宅で生まれたんですが、ちょうどトルネードのまっただ中だったんです!なんというかエキサイティングで、素晴らしい出来事でした。

Marina Novikova: 嫌いなことはどんなことですか?他人のどんな振る舞いにイライラしたりしますか?

Craig Stuntz: いつもつまらないことをしないように心がけているんですが、たとえばほとんど考えなくてもいいこととか、何かをする時にはね。そんなわけで、粘着質の人とか、私利私欲にとらわれている人、個人攻撃ばかりする人と付き合うのはいやですね。

Marina Novikova: 好きなだけ自由な時間があったら、何をしたいと思いますか?(^^)

Craig Stuntz: 何も。自分の娘と遊ぶことは除外してね、それは責務でもあるんですが、楽しいことでもあります。

Marina Novikova: 大きな夢をお持ちですか?

Craig Stuntz: 私の娘について、もっと聞きたいということかな?(^^)

Marina Novikova: ピクニックに行って、Dale Fuller氏のハンバーガーを食べたことがあるというのは本当ですか?(^^)

Craig Stuntz: そんなことはないですね。その手の噂はデマです。いますぐここでそうしたデマを断ち切りたいですね。なにしろ、私が食べたのはDale氏のマッシュルームバーガーなんですから。私はベジタリアンなんですよ。(^^)

Marina Novikova: 学歴をお聞きしてもよろしいでしょうか?また、どうしてハイテク領域で働こうと思ったのでしょうか?それから最初にInterBaseに興味を持ったのはいつ頃のことでしょうか?

Craig Stuntz: 学歴ですね、音楽の話と同じなのですが、これまた何でもありなんです。まず、映像関係 [7] の学位を取得しています。その後、核物理学と電気工学を学びました。学問的には、成績は良かった方ですが、大学は結局実際の生活をチャレンジングなものにすることからかけ離れてしまっているという結論に達したんです。それから私は非営利団体 [8] のいくつかで仕事をしました(わざとそうしているようなところがありました)、Vertex Systems社 [9] に腰を落ち着けるまでですが、そうした非営利団体は非営利で活動すると共に、うまく運営していくために十分な利益を出さないといけないのですよね。多くの人々とと同様に、私はDelphiについてきたのでInterBaseを発見しました。自宅でInterBaseを使って遊んでいただけで、なにか重要な仕事に使ったりしたことはありませんでした、Vertex社で仕事を始めるまではね。

Marina Novikova: InterBaseのニュースグループで活動していると、しばしば同じ質問や同じ間違いを犯す人々を見かけると思います。こういう事に腹を立てたりしませんか。

Craig Stuntz: いいえ、頻繁に上げられる質問は、答えるのも簡単なのです。:) また、忙しい時はそういうものは読み飛ばしてしまいますしね。というのも、多分他の誰かがそうした質問に答えてくれるだろうなとわかっているからです。もし、何度も何度も質問されることがあったとして、それがどこにも文書化されていないとすれば、私はそうした問題に関するアーティクル [10] を書くことにしています。私をいらいらさせる質問があるとすれば(怒らせるとまでは行かないけど)、こちらが適切な答えを書くために必要な情報を、いやいや書いて来るような時ですね。もし、答えを書く時間を使ってほしいと思うなら、その質問についてあなたの抱えている問題の詳細を十分に書いてほしいと思うのです。

Marina Novikova: TeamBでは長いこと働いているのですか?このことから得ているものはなんでしょう(お金に関することではなくて、興味を引かれている事という意味です)

Craig Stuntz: かれこれ3年くらいTeamB [11] のメンバーをやっています。金銭的利益に関して質問しなかったのは正解です、ただ働きなもので。:) この数年間BorlandのR&Dの仲間と一緒にやってきたことが一番の宝だと私は思っています。私がマニュアルや簡単な実験以外の部分でInterBaseについて学んだことのほとんどは、こうしたとても頭の切れる仲間とのやりとりの中で得たものです。私がInterBaseのコミュニティに対してお返ししようと思っていることは、テクニカルサポートやフリーのツール [12] 以外に、Borlandとサードパーティの開発者の関係をより強化したいということなんです。私はこれまでに2つのInterBaseコンパニオンCD [13] を作成していて、定期的にサードパーティのツールメーカがBorlandからのサポートを受けられるように手助けしています。

Marina Novikova: FirebirdがInterBaseへの交換性を保ち続ける可能性についてどのようにお考えですか?彼らがはっきりと言っているように、FireibirdはBorlandの顧客を欲しがっています。

Craig Stuntz: 私はFirebirdプロジェクトに関わっているわけではないので、この件について何か言う立場にないと思いますが、Firebirdチームは彼らのプロジェクトにとってベストだと思うことをする意外にないでしょうし、その根拠もあるのだと思います、それにもし彼らがInterBaseとの交換性を必要ないと思ったり、彼らのツールをもっと多くの人々に使ってほしいと思わなかったりしたとしたら、かえって私はびっくりしてしまいますよ。それに、自分の顧客を他の企業が欲しがらないことを期待するような企業は、結局のところ長いビジネスを続けていくことは出来ないでしょう。

Marina Novikova: InterBase7は革命的なテクノロジーだと思いますか?

Craig Stuntz: 実際の所はそんなものではないですね。バージョン7の新機能によると、データベース界で新機軸となるようなものはありません。実装が大変良くなっているにも関わらずね。しかし、バージョン7は私がInterBaseを使うようになってから、もっとも重要なアップグレードになっています。ご存じの通りスレッド周りが改良されているのですが、私が思うにバージョン7は本当の意味でSuperServerアーキテクチャーという約束を満足させる初めてのものでしょう。しかし、私の日々の業務を大きくかえる可能性のある新機能は、テンポラリシステムテーブルに関するものです。この機能によってサーバの非常な詳細までをモニタすることが出来るようになりました、もう盗人みたいなクエリーやトランザクションやユーザ等々を書いたりしなくてもいいのです。私はInterBase Performance Monitorを書いていますが、文字通りこのツールを自分自身のデバッグに使っています。DelphiのIDEからPerformance Monitorを実行していて、ランタイムで実行していると見間違ったことがありました。

Marina Novikova: オープンソースのInterBase6についてご意見をお聞かせ下さい。これは、Borlandにとってミスだったのでしょうか、それともそうでなかったのでしょうか?

Craig Stuntz: 私が思うに、恐らく誰であってもいくつかの間違いを犯してしまうことはあるでしょう。あとづけの意見で、InterBaseをオープンソースにしたのは間違いだったという人もいます、しかし、こうした意見は単純すぎると思います。何らかの意味で、オープンソース化によって、Jon ArthurがInterBase部門の役員になったわけですが、このことはInterBaseにとってはとてもいいことでした。

Marina Novikova: InterBase7の値段は高くなりました。この価格政策についてお聞きしてもよろしいですか?

Craig Stuntz: この前、この件に関するアーティクルを書いたのですが、InterBaseと他の商用データベースの価格を比較したとき、標準価格に関して、最低でも、InterBaseは価格競争力があると思います。しかし、もし私にそうした権限があるとすれば、2点ほどInterBaseの価格構成に関して変更したい事があります。まず、フリーで無制限な開発用ライセンスが必要です(現在の唯一の選択肢はBorlandの開発用ツールについてくるライセンス又は評価用ライセンスを利用するというもので、両者とも同時接続数に関する制限があります)、それから、CPU数でのライセンスが必要です、同時接続数の制限は無制限のものです、そうしないと他の商用データベース製品との価格競争力を保てないでしょう。明らかに、私が欲しいものもこれなんですが、Borlandのビジネスに関して彼らがどうしようとしているのかをこれ以上知りたいとは思いません。

Marina Novikova: あなたのお好きなIDE/開発ツールはなんでしょうか?

Craig Stuntz: もちろんDelphiですよ。IDEは十分に素晴らしいものですが、それ以上に言語としてとても気に入っています。他の言語でこれはいいなと思うものは、Eiffel [14] くらいですが、これについては商業市場は全然動きがないですね。

Marina Novikova: オープンソースプロジェクトに対してどのような態度をおとりですか?

Craig Stuntz: そうですね、この答えをMozillaで書いてるんですが、私はオープンソースのツールをよく使っていますよ。それに、SourceForgeでプロジェクトの管理者もやっているんです、MIDAS Essentials Packというものですが、そこでは大変活発に活動をしています。他にもいくつかオープンソースの活動に関わっていますが、私がニュースグループ上で他のデベロッパのプロジェクトについて、それを支援するために手間暇かける際には、それがオープンソースであろうと、クローズドソースであろうと、他の何かであっても関係ありません。

Marina Novikova: Plan Analizerをオープンソースにしようという計画はありませんか?

Craig Stuntz: 現時点でInterBase PLANalyzerに関しての長期計画はまだありません。たくさんのIBデベロッパの要求に応えられるようにしたいのですが、現時点では永遠に一つの道に縛られるようになってしまうようなことはしたくないのです、そういうわけでとりあえずうっちゃっているんです。ツールの裏側にあるものは話す価値があると思ってはいます。BorCon2001で、その時点で可能なサードパーティのInterBaseツールのほとんどについてレビューをしました。いくつかのとても良いツールがあるにも関わらず、いくつかの機能はそのどれでも実現されていないのです、ツールはたくさんあるんですけどね、そしてみんな同じようなことをやっているわけです。私がIB PLANalyzerを書いたのは自分が必要としていたからなのですが、サードパーティのツール作者に対するある種の挑戦でもあったのです、かれらが追いついてきてくれたことを話すことが出来るというのはとてもいいことです。私は二番目のツールである、InterBase Performance Monitorをリリースしました、昨年のことです。そして、来年の終わり頃には次の新しいものをお見せできるでしょう。今の時点では、どんなツールもそれを実現しないことをやって見せますよ。まだ秘密なんですけどね・・・。

[1] http://www.yat-kha.com/ YAT-KHA というバンドで、中央アジア系?民族音楽みたいな感じでしょうか。

[2] http://ellsberg.net/ 『Secrets: A Memoir of Vietnam and the Pentagon Papers』が正式名称。ダニエル・エルズバーグ氏はベトナム戦争の政府文書を公表し、トンキン湾事件がねつ造であったことなどを暴露した人物。本書では、イラク戦争をベトナム戦争になぞらえて批判している。

[3] http://www.jeanettewinterson.com/ 『オレンジだけが果物じゃない』でデビューしたイギリスの女性作家。同性愛に関しての告白を含む半自伝的小説である同書は、日本でも人気を博したようです。

[4] http://www.well.com/user/neal/ コンピューターネタの小説が中心のようですが、『In the Beginning was the Command Line』が「太初にコマンド・ラインありき」というタイトルで、週刊アスキーに翻訳が連載されていたようです。

[5] http://www.bellsbeer.com/ ミシガン州Galesburgのビールメーカ。

[6] http://catalog.heifer.org/bees.cfm こんなものも売ってるんですね。$30です。

[7] http://www.rit.edu/~sofa/ School of Film& Animation

[8] http://www.ohiocitizen.org/ Ohio Citizen Action 環境保護団体のようです。

[9] http://www.vertexsoftware.com/ システム系コンサル会社のようです。

[10] http://delphi.weblogs.com/articles Craig Stuntz氏によるWebsite。Delphi / InterBase Weblog というタイトルで、興味深いアーティクルが満載です。

[11] http://info.borland.com/newsgroups/teamb/ TeamBはBorlandのニュースグループ等でサポート活動を中心となって行っている人々です。Craig氏はTeamBの中でInterBase担当となっています。

[12] Delphi / InterBase Weblogs にて、「InterBase Performance Monitor」「InterBase PLANalyzer」を配布されています。

[13] http://delphi.weblogs.com/stories/storyReader$180 希望すればこのCDにツール等を収録してもらえるそうです。

[14] http://www.eiffel.com/